平成30年度税制改正大綱 閣議決定

財務省は、平成30年度税制改正大綱が12月22日に閣議決定されたことを公表しました。閣議決定された「平成30年度税制改正大綱」の概要は下記のとおりです。


平成30年度税制改正の大綱の概要(平成29年12月22日 閣議決定)

働き方の多様化を踏まえ、様々な形で働く人をあまねく応援する等の観点から個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充、観光促進のための税として国際観光旅客税(仮称)の創設等を行う。また、地域社会を支える地方税財政基盤の構築の観点から、地方消費税の清算基準の抜本的な見直し等を行う。このほか、国際課税制度の見直し、税務手続の電子化の推進やたばこ税の見直し等を行う。具体的には、次のとおり税制改正を行うものとする。
 
【個人所得課税】
 ○給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
  ・給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、

         基礎控除の控除額を一律10万円引き上げる。
 ○ 給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の見直し
  ・ 給与所得控除について、給与収入が850万円を超える場合の控除額を

            195万円に引き下げる。ただし、子育てや介護に配慮する観点から、

            23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等を有する者等に

           負担増が生じないよう措置を講ずる。
   ※ なお、大綱の中では、正規の簿記の原則に従って記録している者に

               適用される青色申告特別控除について、その控除額を現行65万円

               から55万円に引き下げるとしているが、次の要件のいずれかを

              満たすものに係る青色申告特別控除の控除額は現行どおり65万円と

              するとしている。
    イ その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、

                  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の

                  特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び

                  保存を行っていること。
    ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の

                 提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用

                 して行うこと。
  ・ 公的年金等控除について、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の

           控除額に195.5万円の上限を設ける。公的年金等以外の所得金額が

           1,000万円超の場合は、控除額を引き下げる。
  ・ 基礎控除について、合計所得金額2,400万円超で控除額が逓減を開始し、

            2,500万円超で消失する仕組みとする。

 【資産課税】
 ○ 事業承継税制の拡充
  ・ 10年間の特例として、猶予対象の株式の制限(総株式数の2/3)の

            撤廃、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)、雇用確保要件の

            弾力化を行うとともに、複数(最大3名)の後継者に対する贈与・

            相続に対象を拡大し、経営環境の変化に対応した減免制度を創設する
      等の措置を講ずる。
 ○ 一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
  ・ 同族関係者が理事の過半を占めている一般社団法人について、その

            同族理事の1人が死亡した場合、当該法人の財産を対象に、当該

            法人に相続税を課税する。
 ○ 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
  ・ 宅地等及び農地の負担調整措置について、平成30年度から平成32年度

            までの間、現行の負担調整措置の仕組みを継続する。
 ○ 中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置
  ・ 革新的事業活動による生産性の向上の実現のための臨時措置法(仮称)

            の制定を前提に、市町村が主体的に作成した計画に基づき平成33年

            3月31日までに行われた中小企業の一定の設備投資について、

            固定資産税の課税標準を最初の3年間ゼロ以上2分の1以下とする特例
      措置を創設する。

 【法人課税】
 ○ 賃上げ・生産性向上のための税制
  ・ 所得拡大促進税制を改組し、①平均給与等支給額が対前年度比3%

            以上増加、②国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上等の

            要件を満たす場合に、給与等支給増加額について税額控除ができる

            制度とする。
  (注)中小企業については、平均給与等支給額が対前年度比1.5%以上

               増加等の要件を満たす場合に給与等支給増加額について税額控除が

              できる制度に改組。
  ・ 情報連携投資等の促進に係る税制を創設し、革新的事業活動による

            生産性の向上の実現のための臨時措置法(仮称)に基づく設備投資に

            対して特別償却又は税額控除を可能とする。
  ・ 租税特別措置の適用要件の見直しを行い、大企業について、所得が

            前期の所得以下の一定の事業年度を除き、①平均給与等支給額が

            前年度を超えること、②国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を

            超えること、の要件のいずれにも該当しない場合には、研究開発税制そ
      の他の一定の税額控除を適用できないこととする。
 ○ 事業再編の環境整備
  ・ 産業競争力強化法の改正を前提に、特別事業再編計画(仮称)の認定

           を受けた事業者が行った特別事業再編(自己株式を対価とした公開

            買付けなどの任意の株式の取得)による株式の交換について、その

            交換に応じた株主に対する譲渡損益に係る課税を繰り延べる。
 ○ 地方拠点強化税制の見直し
  ・ 地域再生法の改正を前提に、準地方活力向上地域とされた近畿圏

            中心部や中部圏中心部を、移転型事業の対象地域とする等の見直しを

            行う。

 【消費課税】
 ○ 国際観光旅客税(仮称)の創設
  ・ 平成31年1月7日以後の出国旅客に定額・一律(1,000円)の負担を

           求める国際観光旅客税(仮称)を創設する。
 ○ 外国人旅行者向け消費税免税制度の利便性向上
  ・ 一定の条件の下、「一般物品」と「消耗品」の合計金額が5,000円以上

    となる場合も免税販売の対象とする。
  (注)現行、「一般物品」と「消耗品」それぞれで下限額を満たす必要。
  ・ 現行の紙による免税販売手続(購入記録票のパスポートへの貼付・

    割印)を廃止し、免税販売手続を電子化する。
 ○ たばこ税の見直し
  ・ 国及び地方のたばこ税の税率を1本あたり3円引上げ。

    平成30年10月1日より1本あたり1円ずつ3段階に分けて実施する。
  ・ 加熱式たばこの課税区分を新設した上で、その製品特性を踏まえた

    課税方式に見直す。
 ○ 地方消費税の清算基準の抜本的な見直し
  ・ 小売年間販売額及びサービス業対個人事業収入額の算定に用いる

    統計データのうち、統計の計上地と最終消費地が乖離しているもの、

    非課税取引に該当するものを除外する。これに伴い、統計カバー率を

    現行の75%から50%に変更し、統計カバー外(50%)の代替指標を人
    口とする。
 ○ 金の密輸入に対応するための罰則の引上げ
  ・ 輸入に係る消費税等の脱税犯に係る罰金額の上限について、脱税額の10倍が1,000万円超
   の場合、脱税額の10倍に引き上げる。

 【国際課税】
 ○ 恒久的施設関連規定の見直し
  ・ 日本に進出する外国企業等の事業利益に対する課税の有無を決める

    「恒久的施設」の範囲について、租税回避を防止するため見直す。
 
 【納税環境整備】
 ○ 税務手続の電子化等の推進
  ・ 法人税等に係る申告データを円滑に電子提出できるよう環境整備を

    進めるとともに、大法人については法人税等の電子申告を義務化する。
  ・ 生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅ローン減税に係る年末調整

    関係書類について、電磁的方法による提出を可能とする。
  ・ 複数の地方公共団体への納税が一度の手続で可能となるよう、

    安全かつ安定的な運営を担保する措置を講じつつ、電子情報処理

    組織(eLTAX)を活用した共通電子納税システムを導入する。

 【関税】
 ○ 暫定税率の適用期限の延長等
  ・ 平成29年度末に適用期限の到来する暫定税率(392品目)の適用期限

    を1年延長する等の措置を講ずる。
 ○ 金の密輸入に対応するための罰則の引上げ
  ・ 無許可輸入罪等について、罰金額を500万円以下から1,000万円以下

    (貨物の価格の5倍が1,000万円超の場合、価格の5倍まで)にする

    等の引上げを行う。

 【備考】
 ○ 森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)の創設
  ・ 次期通常国会における森林関連法令の見直しを踏まえ、平成31年度

    税制改正において、森林環境税(仮称)(平成36年度から

    年額1,000円を課税)及び森林環境譲与税(仮称)(平成31年度から

    譲与)を創設する。