設備投資・雇用減税廃止へ 法人税改革、企業負担公平に

日本経済新聞 平成26年9月19日 朝刊より引用

 

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 政府は法人税改革で、第2次安倍政権が導入した設備投資や雇用を促す税制について、今後3年程度で順次廃止していく検討を始めた。国際的にみて高い法人実効税率の引き下げの財源にするため、政府は政策減税をゼロから見直す方針を示しており「安倍税制」も例外にしないことにした。経済界も廃止を受け入れる方向で調整する。
 廃止を検討するのは、安倍政権が13年度、14年度の税制改正で導入・拡充した企業向けの政策減税。減税規模が最も大きいのが、生産性の高い設備を導入すると初年度に投資額の5%分(中小企業は10%分)だけ税金を軽くする「設備投資促進税制」。政府は設備投資を年70兆円規模に回復させる目標を立てており、その切り札とされていた。
 さらに、雇用を1人増やすごとに40万円税金を減らせる「雇用促進税制」、給与総額を増やした分の1割だけ税金を軽くできる「賃上げ促進税制」も廃止する方向だ。
 安倍政権はそもそも、設備投資や雇用に消極的な企業の姿勢がデフレを長引かせていると判断。デフレ脱却を確実にするため、制度の導入に踏み切った。ただ、最近は物価上昇率が安定的にプラスとなり、人手不足も目立ってきている。臨時の減税措置は役割を終えつつあるとみている。
 これらの措置は、今後期限を迎えたものから3年程度かけて順に廃止していく。廃止による企業の負担増(税収増)は、導入時の利用見込みなどを基にすると、5千億円規模との見方がある。
 政府は期限が切れた政策減税はすべて見直す方針だが、グローバル企業の利用が多い研究開発減税などは経済界が廃止・縮小に強く反対している。一部の業界に恩恵が偏る小規模な減税措置も、関係業界や族議員の抵抗があり、見直しが進むか不透明な情勢だ。安倍政権が始めた減税措置は比較的新しく既得権が根付いていないため、廃止しやすいという面もある。
 政府が政策減税の廃止・縮小を急ぐのは、法人実効税率を数年で20%台に下げる財源にするためだ。税率を下げる代わりに、特別な減税措置による恩恵は少なくし、多くの企業が公平に税を負担する仕組みとする。
 政府は年内にまとめる15年度の税制改正で、赤字大企業への課税強化と欠損金の繰越控除制度の見直しに優先的に取り組む。「安倍減税」の廃止はこれらに続く措置で、数年かけて実施する。
 法人税改革を議論した政府税制調査会では、減価償却制度の見直しや中小企業への課税強化などに取り組むべきだとの意見が多かった。ただ、これらの制度の見直しは景気への影響が大きい。来年10月の消費再増税もにらみながら慎重に議論を進めていく。

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