「ものづくり」1次申請、全国最多
政府の緊急経済対策(アベノミクス)の補助金を狙え――。中小企業の事業拡大を後押しするため、「オール群馬」で国の補助金の獲得支援に力を入れている。県が庁内に専門チームを設け、金融機関も取引先への相談会などを開いている。こうした取り組みが奏功し、目玉の補助金の第1次締め切りでは47都道府県で最多となった。
「今回の制作の補正予算は10年に1度のチャンス。県内企業を元気にするために頑張ろう」。12日、群馬県産業経済部内の会合で、高橋厚部長が激(げき)を飛ばした。県内企業の国の補助金獲得を支援するプロジェクトチームの集まりだ。
実はこのチームの発足は1月9日。政府が大型の補助金を創設するとの情報が流れるといち早く立ち上げた。情報収集とともに過去の目玉補助金からの内容を予測し、対策を検討。概要しか固まっていない2月中旬、関東経済産業局の担当者を招き、企業向けの補助金の説明会を開催した。
同チームは29人。説明に参加した約450社のうち前向きな企業を分担。多い職員は1人で30社を担当し、個別指導に応じた。4月の人事異動に合わせて衣替え。39人に増員した。
中でも狙いを定めたのは「ものづくり補助金」。中小企業の試作開発や設備投資などに1000万円を上限に3分の2を助成する。総額は1007億円。全国で1万社を対象にしており、「目玉事業の1つ」(中小企業庁)。
県は商工団体、産業支援団体などにも連携を呼びかけ、「オール群馬」で取り組んだ。金融機関も「取引先が補助金を使って事業を拡大すれば、融資の増加が見込める」(群馬銀行)と獲得を支援する。
群馬銀は取引先企業にメールで情報提供するほか、行内に「補助金デスク」を新設、企業からの問い合わせに応じている。3月には県産業技術センターなどの協力を得て個別相談会を開いた。
機械加工・組み立ての堀越製作所(高崎市)も相談会に参加した。現在、油圧ポンプの加工を中国企業に委託しているが、円安を背景に内製化を検討。同行が補助金活用を提案してきた。堀越一郎社長は「記入した申請用紙を見て、写真や具体的な工程表を入れた方がいいとか、ここが説明不足といった助言を細かくしてくれた」と話す。
東和銀行はかねてから補助金獲得支援を手掛けてきた「ものづくり補助金」でも申告書類が公表させる前から、従来の補助金の申請用紙に記入してもらい、書き方を個別に指導した。
同行やしののめ信用金庫では担当者が関東経済産業局の社員と一緒に取引先を訪問。「補助金を活用して新製品が完成すれば、雇用がどれだけ増えるかといった社会的な意義をわかりやすく記入すると効果的」。経済局の職員がノウハウを伝授する。
3月25日に締め切った「ものづくり補助金」の第1次申請は全国で約1800件。群馬県内からは141件を占めた。事務局を務める全国中小企業団体中央会によると、茨城や栃木の約3倍で、東京(130件)を抑えて、47都道府県で最も多かった。
第2次締め切りでは群馬県内から400件を超えたもようだ。補助金を作っても利用されないケースも多い。果たして、こうした取り組みが地域経済を活性化させるモデルになるか。群馬モデルに注目したい。
(日本経済新聞 平成25年4月 日)