自治体、2040年に半数消滅の恐れ 人口減で存続厳しく 各種推計、政策見直し迫る

平成26年5月8日 日本経済新聞 より転載 

 

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日本の人口が減ると、全国の地方自治体の維持が難しくなるとの長期推計が相次いでいる。元総務相で東大の増田寛也客員教授らは8日、2040年には全国1800市区町村の半分の存続が難しくなるとの予測をまとめた。国土交通省も全国6割の地域で50年に人口が半分以下になるとしている。ある程度の人口を保つことを前提にした国土政策は見直しを迫られる。

 40年の人口推計は大学教授や企業経営者からなる民間組織「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が発表した。

 三大都市圏への人口の純流入数は13年に約9万人。増田氏らの試算は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計データを基に都市圏への流入が毎年6万~8万人続くとの前提で試算した。大都市への人口流入は今後、鈍るとの見方が多い政府の各種推計と比べ、増田氏らの試算は地方部の人口減の影響が出やすい特徴がある。

 創成会議が着目したのは、出産に適した年齢といえる「20~39歳」の女性の人口動態だ。40年には全国の49.8%にあたる896の市区町村で20~39歳の女性が5割以上減り、このうち523市区町村は人口が1万人未満になる。こうした自治体は女性が生涯に産む子どもの数が増えても人口を保てず、「消滅するおそれがある」とした。

 全国でも高齢化が進む秋田県は25市町村のうち大潟村を除くすべての自治体が人口構成で見ると存続が難しくなる。青森県も9割近くの自治体で女性が50%以上減る。

 人口が集中する首都圏でも若い世代の女性は大きく減る。JR池袋駅などがある東京都豊島区に住む20~39歳の女性は40年には半分に減る。東京23区でも、10.2~50.8%女性が減る見通しだ。東京都はすでに出生率が全国で最も低く、地方から流入しても子育て世代の女性が減るのを補えない。大阪市や神戸市も一部の区で若い世代の女性が半減する。

 同会議は人口減を食い止めるため、12年に1.41だった合計特殊出生率を、25年までに1.8まで高める必要があるとした。保育所が付いたマンションを整備して子育て世代を応援するほか、企業ごとに社員の出生率を公表させて家庭との両立を促すべきだとした。

 政府では、国交省も3月末に人口の予測をまとめた。1平方キロメートルごとに分けた全国の18万地点で見ると約6割で50年には人口が半分以下になる。2割にあたる約3万6千地点では、50年には住む人がいなくなる。

 国交省は、行政や商業施設を一部地域に集約して効率を高める「コンパクトシティー」が必要になるとの方向性を強調。人が減る離島や山間地では、公共交通に比較的お金がかからないバスを活用するなどの施策を検討すべきだと考えている。

 人口減は人手不足や過疎など日本の経済・社会に様々な影響を与える。中長期に厳しい姿を見せることで財政や社会保障制度改革で早く手を打つべきだとの見方が強まるほか、公共事業の集中と選択を巡る政策論争につながる可能性がある。

 

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